無双 真(むそう ただし)

 世界的科学者の父と世界的音楽家の母を両親に持つ、本編の主人公。15歳。
物語が開始した時点では実家を離れ、父が設立した『無双未来科学研究財団』が
保有・管理している専用マンションを借りて自活している。

 女性の様に肩以上まで伸びた漆黒の長髪と、全身黒ずくめのスーツが印象的な
真の姿だが、これには内に秘めた理由があるらしく、後のエピソードで語られる事になる。
(イラストで描かれる真の姿はショートヘアの物が殆どだが、これは真が髪を切った後の物である。
実は、この髪を切る事になるいきさつにも逸話があり、これも後のエピソードで語られる事になる。)

真は、高校一年とは思えない程成熟しており、非常に達観した物の見方をする。
精神年齢も高く、大人以上に大人を感じさせる時がある。
またいかなる時でも沈着冷静で、何がおきてもまるで動じる事がない。
彼自身過去に色々な事を経験している様で、ある意味場数を踏んだ余裕にも見える。
(真の少年時代は謎に包まれており、何があったかは
彼が寡黙である事も手伝って、あくまでも推測の域を出ない。
ただクラスメートの間では、ある事ない事ひっくるめて
色々な事がまことしやかに噂されている様だ。)
その点で、彼の言動や行動が他の同級生を子供扱いしている様にも受け取られ、
それが原因でクラスメートの反感を買う事もしばしばである。

 また、真は総じて一人でいる事を好み、自身を飾る事を好まず、自分自身を嫌っている。
真の性格は物静かと言うより寡黙であり、感情や自分の本心を全く表に出さない。
ある種殺気にも似た独特の雰囲気をたたえており、そのため誰も近寄ろうとはせず
クラスの中でも特に敬遠された存在である。
 真は自らの行動様式の中に独自のモラルを形成しており、物事に対する善悪の判断が非常に厳しい。
とはいえ普段の彼は非常に寛容(冷淡ではあるが)であり、物静かな彼の怒る姿を目にする事はまずない。
しかしそれだけに、彼の逆鱗に触れ一度本気で怒らせてしまうと、もう誰にも止められない。

 本当の彼は、自分よりも相手を大事に考え、人の痛みを理解する事のできる、
非常に心根の優しい繊細な青年なのだが、最愛の少女『綾香』の消失で人間不信に陥った彼は、
繊細過ぎるが故に自らの心を頑なに閉ざし、他人との接触を拒絶する様になる。
他人を寄せ付けない真の独特の雰囲気や冷淡な態度は、彼自身が他人を遠ざけるために
意図的にそうしている物なのだが、物語冒頭に於ける大塚由美やその友人との出会いは、
そんな真にとって大きな転機となる。

 綾香の消失以降、真は特に自らのアイデンティティを求めて彷徨っていた節が在る。
『自分は何者なのか?自分は何処から来て何処へ行くのか?何をすべきなのか?』
両親の死後、唯一最後の支えであった綾香を失い、進むべき道が見えない状況の中、
常に心の何処かで問い続けてきた真は、自身にあずかり知らない特異な『力』が出現するに至って、
やり場のない不安と焦りと共に、いよいよその思いを強めていく。

 心すら壊れかけ、自殺を企図する程追い詰められていた当時の真を救ったのは、
後に真が唯一師と仰ぐ人物、風刃 凌(かざは しのぐ)であった。
凌は、精神鍛錬として、自身も修業している『草摩流武術道場』に真を通わせ、
剣道・弓道を始めとしてありとあらゆる武術を修業させた。
それにより徐々に本来の落ち着きを(表面上は)取り戻していった真は、
驚く程短期間の内にめきめきと武術の腕を上げ、
物語開始の時点でその実力は凌を軽く凌ぐ程になっていた。
しかしそれとは裏腹に、真の心の奥底には未だに暗くて深い闇が広がっており、
それがいまも変わらず真の心に大きな影を落としている事を、
凌は知る由もなかった。

 風刃 凌との出会いから高校入学までの間の真の足取りを知る者は殆どいない。
風刃 凌ですら、真の足取りの全てを掴みきれている訳ではない。
実は、裏の世界に於いて真の名前が知られ始めた時期と、
足取り不明の時期が妙に符合するのである。
この時期に彼は一体何をしていたのであろうか。只、真が高校に入学する頃には、
『無双真と関わる者は“消滅する”』とさえ囁かれ、裏の世界で彼の名を知らない者は
いなくなっていたと言う。

しかし、そんな真も、高校進学後間もなくして、思いも寄らぬ『来客』の出現がきっかけとなって、
真は自らの問いに対する回答を徐々に見つけ出して行く事になる。そしてそれと共に、
彼の運命も大きく動き、変わって行く事となるのである。

 真には、その出生、両親、父の実家など、彼の周囲には彼自身も含め不明瞭な事柄が非常に多い。
特に自らの出生や父の実家の事に関しては当の真自身すら知らない。
実は、真の出生には彼自身にも秘匿された重大な秘密が隠されている。
そしてそれには父の実家が大きく関わってくるのである。

 父の実家、無双本家・無双一族は、一説には天皇家との密接な関わりさえ示唆される程
古より強大な力を有していた一族で、その歴史は軽く1500〜2000年を超えるとも言われ、
神代の時代・日本創生に関わっているとも噂されている、謎の一族である。

 彼等は伝説の中でのみ語り継がれ、歴史の表舞台にその名が登場する事はまずない。
全てが謎に包まれており、大多数の考古学者・歴史学者は彼等の実在に対して懐疑的である。
 真の父・無双 覚士(むそう さとし)は無双一族の長子であり、次期当主となる筈だった人物だが、
突然離反同然に一族を飛び出したらしく、その理由は明らかにされていない。
 真は、物語冒頭では彼自身もその存在に朧気ながら気づいているようだが、
超能力に似た特異な『力』を持っている。真の持つこの特異な『力』は一族から
『FEADER(フェーダー)』と呼ばれ、物語の根幹に関わる重要な鍵である。
何故彼がそんな力を有しているのだろうか?

無双一族はこの力に異常な程注目しており、一族の隠密を真の周辺に送り込み、
極秘裏に彼の動向を探らせている。

 無双一族、思いも寄らぬ来客、特異な力『FEADER』。
運命は、真を中心に大きく音を立てて動き始め、
何も知らぬ真は、否応なくそれらに立ち向かう事を要求される事になる。

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